海という畑でつくる海苔のはなし
おにぎりにお寿司、和食に欠かせない身近な食材の海苔。 江戸時代には今のような海苔として食べていたと言いますから馴染み深い伝統食だということは間違いありません。 海苔は、東北から九州の太平洋側にある穏やかな湾内で育ちます。中でも、佐賀県、福岡県、熊本県にまたがる有明海は、おいしい海苔が採れる海苔の名産地。ぬま田海苔では、その有明海で育った海苔をお届けしています。
海苔はこうして作られる
海苔づくりは「種」をつくるところから始まります。 その種を網で芽吹かせ、海で育て収穫します。「種を蒔いて、収穫した芽を食べる」と聞くとシンプルですが、海苔の養殖の技術が安定したのは戦後になってから。現在は海苔産地の漁業組合が培養場を持ち、海苔の種を専門的につくり、生産者に販売しています。
数十万個の種を育てる培養場
漁期が終わる3月頃に海苔の葉から胞子が放出されます。そして、この胞子が貝などの石灰質にもぐり込むと 「糸状体(しじょうたい)」と呼ばれる糸状の藻になります。海苔は、この糸状体のまま石灰質の中で夏を過ごし、 海水温が下がる秋頃に「殻胞子」が網に付いて芽になります。この「殻胞子」が飛び出す直前までが種づくりの仕事です。
おいしい海苔のための種づくり
種づくりの期間は、3月頃から漁が始まる9月末頃まで。 胞子を育てる石灰質には牡蠣の殻が使われます。 海苔の胞子を蒔いた牡蠣殻は殺菌した海水の入ったプールへ。牡蠣殻にまんべんなく光をあてて光合成をさせながら、糸状体の成長の状況や病気の有無を毎日チェックします。夏は暑く冬は寒い施設の中で数十万個の種を育てる大変な仕事です。
海という広大な畑で海苔を育てる
秋を迎える9月頃からいよいよ海での仕事がスタート。海苔の網をつなぐ支柱を海に並べはじめ、30枚ほど重ねた海苔網に一度に種を付ける「採苗」としばらく芽を育てる「育苗」を行います。種が網に付くのは水温が23℃以下に下がる10月中旬頃。網に付いた海苔の芽が育ったら重ねた網を1枚だけ残して、残りの網はすべて冷凍庫で保存します。
3月まで続く海苔の収穫
海苔芽が15センチから20センチに伸びると収穫開始。種付けの後に残した1枚が「秋芽(あきめ)」と呼ぶ初摘みの海苔に。たっぷりと栄養がある若々しい海で育った「初摘み」の海苔が毎年、ぬま田海苔が仕入れている希少な海苔です。初摘みが終わると、冷凍していた網を新たに海に戻します。漁が終わる3月末までの間、こうして収穫を繰り返しながら、全部で10回程度の海苔の漁を行います。
海苔の加工までが生産者の仕事
光合成をする日中を避け深夜に収穫された海苔は、それぞれの生産者が管理する加工所へと運ばれます。海苔を板状に加工して等級付けを受けるまでが日本の海苔の生産者の仕事です。海外では、海の漁と加工は別々の場合が殆ど。日本の海苔がおいしい理由がここにあるわけです。
おいしい海苔をつくる加工技術
収穫した海苔は、繰り返し洗ってゴミを取り除き細かく刻んで真水を混ぜ板状に伸ばします。30℃から35℃の釜で3、4時間かけて低温乾燥させ異物がないか検査機を通ると結束されて完成です。収穫時期や状態によって加工の方法を変えることで生産者の個性が活きた海苔がつくられています。
100を超える等級付け
加工所で板状に仕上がった海苔は、各漁協の検査場へ運ばれて等級付けされます。等級は産地によって異なり100を超えることも。海苔を評価するためのランク付けではありますが、ぬま田海苔では、等級だけに頼ることをせず、食べてみておいしいと思う海苔を選んでいます。
仕上げの火入れ作業
各社の入札を経て買い付けられた海苔には、この時点で10%程度の水分が残っています。それを3%以下に乾燥させるのが「火入れ」です。55℃、65℃、85℃と徐々に温度を上げながら約3時間をかけて丁寧に火入れをすることで、パリッとして香りのいい海苔が仕上がります。
丁寧で繊細、それが海苔づくり
天候や環境という自然の力に左右されながらも長い時間をかけて伝承してきた海苔づくり。海藻を乾燥させたものというイメージが強いですが、研究を重ねた種づくりから、厳しい冬の海での漁、生産者の蓄積された丁寧な加工技術と、1枚の海苔ができるまでには長い道のりがあります。ぬま田海苔では、厳選した海苔をお届けしながら海苔本来の味と伝統食の魅力を伝えていきたいと思います。