note | かっぱ橋に突如現れた謎の海苔屋、その正体は…

大正元年の頃、小道具商が軒を連ねたことが始まりと言われる「かっぱ橋道具街」。菊屋橋の交差点から言問通り(ことといどおり)まで約800mに渡って伸びる道具街通りに、今では総数170を超える個性豊かな店舗が並んでいます。そのちょうど真ん中を通る、元々は上野と浅草を高僧が詣でる為の「御成道」として繋げられた通り、それが「かっぱ橋本通り」と呼ばれています。

そんな歴史ある二つの通りが交わる場所に
2018年の5月、
ポツンと現れた海苔屋がありましたとさ…

皆さま、初めまして!
わたくし、ぬま田海苔 4代目当主の沼田 晶一朗と申します。
学生時代から17年間勤め上げた某アパレルブランドを退社し、現在は実家の海苔屋で奮闘中です。
幼い時から食べ続けてきたぬま田海苔、大人になって強く感じたのは

全ての海苔がそれぞれに違っていて、今まで食べてきた海苔はどこにでも売っているような海苔ではなかった

という事でした。
そこで、「一人でも多くの方に、先代から受け継がれた上質な海苔を味わって欲しい」「初摘み海苔の専門店を開きたいという母の夢を叶えたい」という想いを胸に、思い切って転職した次第です。

【まずはじめに、私たちは何者なのか?】

「株式会社 NUMATA HARUO SHOTEN」それが私の所属する会社。
代表取締役は母の沼田孝枝です。
社名は祖父、沼田治雄が創業した店舗名からちなんでいます。そして店舗は「ぬま田海苔 合羽橋本店」。とにかく海苔が大好き!!そんな親子が2人で切り盛りしているお店です。

ちなみに、他の兄弟についてもご紹介。
弟の雄二朗はobjcts.ioというレザー製品のブランドをやっている傍で、色々とサポートしてくれています。姉や妹もピンチの時にはすぐに駆けつけてくれる、そんな心強い兄弟みんなで支えあいながらスタートしました。

1937年創業

私の祖父が海苔と鰹節の店、『沼田治雄商店』を川崎に開いたのは昭和12年でした。
川崎と聞くと、皆様が連想するのは埋立地に連なる工場地帯ではないでしょうか?実際その通りですが…
そんな川崎の海で、かつては"大師のり"という上質な海苔が養殖されていたのです。
多摩川が運ぶ山のミネラルと、東京湾に広がる海のミネラルがちょうど溜まる場所、それが川崎の海苔漁場でした。
そして昭和48年、工業化の波により大規模な埋立て工事が進んでいくうちに、川崎漁場は約100年の歴史に幕を下ろしてしまったのでした…。
それと同時に、海苔の生産者たちはそれぞれ新しい道へと進んで行ったのです。
そんなかつての生産者たちも『ぬま田海苔』のお客様に加わり、「どうしてもあの味が忘れられない」という彼らをやっとのことで納得させられた海苔、それが"有明海産の初摘み海苔"だったのです。

日本で唯一の"有明海産の初摘み海苔専門店"

我々が扱うのは、残念ながらアサクサノリでも江戸前の海苔でもありません。ただ、目指すのはかつての上質な江戸前の海苔の味。
大きな湾に川から注がれる豊かな山のミネラル、そしてそこに交わる有明海のミネラル。それらが集まる場所で、一番最初に栄養を吸収して育つのが初摘み海苔です。
変わらぬ本物の海苔を求めて、私たちは"有明海産の初摘み海苔専門店"となりました。

海苔のシングルオリジンと食べくらべ

シングルオリジンとは、コーヒーで良く聞かれる言葉ですね。”〜農園” ”〜種"と表示され販売される同じ産地・品種のみのコーヒー豆で、単一品種のみを安心して楽しむことができます。

では、海苔のシングルオリジンとは?

一般には知られていませんが、海苔には「漁場名」「等級」があります。「入札」を経て、海苔は生産者から販売者へ売買されるのですが、そこでは海苔の産地と等級が全て開示されてやり取りされています。ぬま田海苔では、その産地と等級名を包み隠さず全て開示しています。お客様へどういう海苔かわかりやすく説明する、またどういう海苔か安心して買えるようにする、ためです。そしてそれが日々努力されている海苔の生産者の方々のアピールに繋がれば、本当に嬉しいです。
そんな各地で厳選された様々な種類の「海苔を食べくらべ」できるのがぬま田海苔。表示だけではなく、実際に海苔も食べくらべできれば本当に安心ですよね?お客様に自分好みの海苔を購入していただくために。

 

初摘み海苔のリスク

そんなに初摘み海苔が美味しいのなら、もっと多くの海苔屋が大々的に売り出せば良いのでは?と皆さまお思いではないでしょうか。
なぜそれができないのかというと、初摘み海苔は美味しいと同時にリスキーな海苔でもあるから、なのです。
我々が扱う「秋芽網(あきめあみ)」の初摘みは、「冷凍網(れいとうあみ)」の初摘みと比べると”味が安定しない”と言われる事もあります。また、海苔が柔らかすぎて欠けてしまう事もあり、それは買い付けの1割になることも…。
ただ、そこは発想の転換!欠けてしまった海苔は乾海苔の焼きたてを味わう貴重な経験に変えていただこうと、私たちの店舗では海苔焼機を使って、お買い上げいただいた方にサービスで焼きたての海苔を提供しております。
”乾海苔を買って、家で焼いて食べる”
昔は日常だった海苔の味をぜひ店舗で。これ以上言葉では説明できません。

【初摘みにこだわる理由】

それでもなお初摘み海苔にこだわる理由は、非常にシンプルです。
私たちが大好きだから!!
柔らかさ、ふわっとした口どけ、芳醇な香り、広がる旨味、そして「今年はどういう特徴が強い海苔ができるのか?」という期待。これら全てが初摘みならではの魅力なのです。
2017年の海苔は何年かに一度というくらい、有明海では柔らかい海苔ができました。
2018年の海苔は前年よりも2日間長く海に付けた分、じっくりしっかりと育った海苔の板と味の強さが特徴で、食べ応えのある海苔になりました。
毎年違う味だからこそ、違った楽しみ方がある。
どんな海苔が出来上がるのか、本当に楽しみですね。
私たちはその中から、違った美味しさの海苔を厳選して提供しています。

 

なぜ合羽橋に?

そんな私たちが合羽橋に出店した理由とは?
食にまつわるプロが集まる合羽橋。WEBで全てが揃うこの時代に、店頭で生の声を伝えたい、聴きたい、という関係性を大切にする、売る方も買う方もこだわりを持った方ばかりです。そんな方達も含めた多くのお客様に、初摘み海苔の美味しさや、漁場によって異なる海苔の味の違い、また、どのように海苔が作られているのかなど、生産者を代弁する気持ちでここ合羽橋にて発信していきたいと考えています。
炊きたてのご飯に美味しい海苔、
日々の暮らしを豊かにしてくれる、美味しい海苔をこの場所で提案し続けたい。

それが私たちの想いです。

 

美味しくない海苔なんて無く、どう美味しいかが違うだけ

最後に、海苔は有明海だけでは無く、様々な産地で色々なものが収穫されます。その味の仕方や特徴、美味しさもバラバラ。私も可能な限り色々な海苔の味を楽しんでいます!
皆さまにも、色々な海苔を食して美味しさの違いを楽しんでいただきたい、そして自分好みの海苔をぜひ見つけて欲しいなと思っています。

初回、最後までお付き合いいただきありがとうございました。

次回以降はテーマごとにより深く、お伝えできればと考えております。
よろしければ、これからもどうぞお願いいたします。

ぬま田海苔 4代目当主 沼田 晶一朗


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